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2016年4月 6日 (水)

アベノミクス「4年目」の正念場 上がらない賃金の背景に人口動態

アベノミクス「4年目」の正念場 上がらない賃金の背景に人口動態
アベノミクスが第2次安倍政権の成立(2012年12月)とともに始まったとすると、昨年12月から4年目に入ったことになる。

 日本の政治において「4年」というのは重要な意味を持つ。なぜならば「4年」は衆議院の任期に当たる。衆議院は解散されることが半ば当然となっているが、それでも同院の任期が4年ということは、一内閣は4年をめどに一定の政策の成果を出すことが制度上、要求されている。その「4年目」にまさに今、アベノミクスは入っており、政策の成果が厳しく問われる。簡単に言えば、「期待の好転」だけではもはや政策効果として説得力を持ちえない。

完全雇用状態でも実現しない賃金上昇日銀の意図に反したフィリップス曲線

 アベノミクスが4年目を迎える中、日銀が2013年4月に導入したQQE(量的・質的金融緩和)も今週から4年目に入った。当初、2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するとされた「物価安定の目標」すなわち「総合CPI前年比2%」の達成時期は、今では「2017年度前半ごろ」まで延長されている。

 しかも日銀の想定する「CPI前年比2%」は単にCPIだけが上がればよいというものではない。あくまで「安定的」に物価が上がらなくてはならない。この「安定性」について、2013年9月の共同通信社主催「きさらぎ会」の講演で、黒田総裁は「景気が普通の状態の時に2%になるような経済・物価の関係」という見解を述べた。これは需給ギャップがゼロの状態でCPIが前年比2%のペースで上がる状態と同義である。

 すなわちフィリップス曲線(横軸に需給ギャップ、縦軸にCPI変化率をとったときの両者の関係)の切片が2%で定着することが、「安定的」な物価の2%上昇であるというのが黒田総裁の考え方である。

 この考え方を労働市場に当てはめるとすれば、完全雇用の状態で賃金がCPI前年比2%とバランスを取りながら上がる状態となろう。完全雇用とは、景気の強弱に起因する失業率つまり循環的失業率がゼロの状態を指し、足下でほぼ実現されている。

 問題は、それにもかかわらず日銀が意図するような賃金上昇が実現していないことである。労働市場におけるフィリップス曲線(横軸に循環的失業率、縦軸に賃金増加率をとったときの両者の関係)の切片は、日銀の意図に反して下がっている(図表1)。しかも皮肉なことにアベノミクスが始まった2012年末から、フィリップス曲線の切片が一段と低下している。

◆図表1:低下するフィリップス曲線の切片

フィリップス曲線の切片が下がる背景新たな労働供給者が男性から女性に

 なぜアベノミクスが始まった2012年以降、フィリップス曲線の切片は下がっているのだろうか。別の言い方をすれば、なぜ完全雇用が実現しても、かつてより賃金増加率が低いのだろうか。ポイントは、アベノミクスが始まった2012年以降、労働供給主体が変わってきていることにある。

 15歳以上人口に占める労働参加者(就業者と失業者の合計)の割合である労働参加率は、2012年以降も男性が下がり続けている。これに対して、女性は2012年頃から一転して上昇している(図表2)。つまり2012年以降、日本では新たな労働供給主体として女性の位置づけが高まっている。

◆図表2:2012年以降、女性が牽引する労働参加率

 厚生労働省の調査によると、労働者に占める正社員以外(パートタイム労働者、契約社員、嘱託社員、派遣労働者、臨時労働者、出向社員など)の割合は、この10年ほど男性が25%程度であるのに対して、女性は55~60%と過半に達する。この性別格差は特にパートタイム労働者の割合(男性は10%、女性は40%程度)で目立つ。

 同じく厚生労働省の調査によると、2015年の1人当たり年収は労働者全体では376万円であるのに対して、パートタイム労働者は117万円にとどまる。

 こうした中、2012年以降にみられる女性の労働参加率の上昇は必然的にパートタイム労働者比率の上昇を伴うこととなり、その結果、同じ完全雇用状態(循環的失業率=ゼロ)でも、賃金の増加ペースはかつてより緩やかになりやすい。すなわちフィリップス曲線の切片の低下である。

人手不足の実態と重要な変化過去40年で初めて非製造業が主導

 2012年以降、女性の労働参加率が高まった背景は、今回の人手不足が非製造業主導となっている点にある。

 日銀短観に含まれる「雇用人員判断DI」を見てみよう。同DIがプラスの時、雇用人員が「余剰」と答える企業が「不足」と答える企業よりも多いことになる(マイナスはその逆)。全産業ベースの雇用人員判断DIは2013年からマイナス、つまり人手が足りないと答える企業が余っていると答える企業より多くなっている(図表3)。まさに人手不足である。

◆図表3:非製造業主導で低下する雇用人員判断DI

 しかし、人手不足自体が今の日本経済の特徴ではない。もう一度、図表3を見てみよう。過去とは明らかに異なる動きが足下で生じている。

 雇用人員判断DIがマイナス(人手不足)の方向に向かうとき、過去は常に製造業と非製造業の差が消えていた。ところが今次局面では、製造業と非製造業が乖離した状態で、同DIが下がっている。これはデータの集計が始まった1974年以降で初めての現象である。つまり今回の人手不足の特徴は、非製造業が主導するという「業種格差」にこそある。

 人手不足が非製造業主導となったことが、女性の労働参加と高い親和性をもったと推察される。実際、非製造業の同DIがマイナスになったのは2012年ごろであり、女性の労働参加率の上昇が始まった時期とほぼ重なる。

2012年以降、サービス向け家計支出が増加背景には退職者の増加という人口動態

 では、なぜ今回の人手不足は非製造業主導という特徴を持つのだろうか。これは決して単純な問題ではない。2012年以降の円安を背景に、いわゆるインバウンド需要(非居住者による国内支出:足下で年間3兆円[GDP比0.6%]程度)が増え、その結果、宿泊や飲食など非製造業向け需要が増えている面はあろう。あるいは、アベノミクスの下で急増した公共投資が建設業の労働需要を刺激したことも指摘できる。

 しかしここでは、国内家計の支出行動の変化にも注目したい。国内家計は2012年頃からサービス向け支出額を増やしている(図表4)。一方、耐久財や半耐久財(被服、履物、皮革製品など)への支出はほとんど増えていない。中でも耐久財への支出額は2014年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要を除けば、過去10年全く増えていない。

 2012年以降、家計支出がサービスなど非製造業を軸として増えていることが、インバウンド需要や公共投資の増加と相俟って、非製造業主導の人手不足につながったと考えられる。

◆図表4:サービスが牽引する名目国内家計最終消費支出

 2012年以降、国内家計の支出がサービス向けを軸とするに至った背景に人口動態が挙げられる。

 2012年といえばアベノミクスが始まった年との認識が強いが、日本の人口動態においても2012年は特別な意味を持つ。1947~49年生まれで日本の人口の5.1%を占める第1次ベビーブーム世代(団塊世代)が65歳という退職年齢に達し始めたのが2012年である(図表5)。

◆図表5:65歳を超えた団塊世代

 退職に伴って確実に増えるのが余暇である。つまり退職者の消費行動においては「時間の消費」が決定的に重要なテーマとなる。この「時間の消費」につながるのがサービス支出である。例えば旅行、宿泊、飲食などは事実上、時間の消費という側面を持つ。

 サービスが国内家計の支出を牽引するという2012年以降の特徴は、退職者の増加という人口動態を背景としていた可能性が高い。

流れを変えるためには労働市場改革こそが本丸

 アベノミクスは2012年に始まった。日銀も2013年4月にはQQEの導入という形で、アベノミクスの主軸を担った。しかし、アベノミクスの下、皮肉にもフィリップス曲線の切片は低下し、日銀の「物価安定の目標」はいまだ実現していない。本稿ではその背景として、2012年に起きた変化に行き着いた。すなわち第1次ベビーブーム世代の65歳到達という人口動態である。

 ややもすると我々は、2012年以降の経済の動きを、全てアベノミクスに結び付けがちである。しかし、実際には人口動態に根差す動きも大きい。その一例が本稿で見た「アベノミクスが始まった2012年→第1次ベビーブーム世代が65歳到達→余暇の増加 →サービス消費の増加→非製造業主導の人手不足→女性の労働参加率の上昇→パートタイム労働者比率の上昇→フィリップス曲線の切片の低下」という流れである。

 これを見たとき、今後のアベノミクスの課題は「女性の労働参加率の上昇→パートタイム労働者比率の上昇→フィリップス曲線の切片の低下」という流れを変えることである。

 今後も日本では非製造業の位置づけが高まるであろう。それは女性の労働参加率を高めやすいが、現状の雇用の在り方では、結果的にパートタイム比率の上昇を経て、フィリップス曲線の切片を下げやすい。

 こうした事態を変えるためにも、(1)「同一労働価値、同一賃金」に象徴される賃金体系の構築、(2)その結果としての多様な就業形態の定着、(3)産業間の人の移動を促す制度設計、など労働市場改革が求められる。4年目という節目を迎えたアベノミクスにおいて労働市場改革こそが本丸とならなくてはならない。

(以上、2016年4月6日付「ダイヤモンド・オンライン」転載了)

本当に安倍首相がアベノミクスなるもので、景気浮揚、経済成長をさせたかったのか私には疑問です。

むしろ、富裕層を先ずはもっと富ませることで、その富が貧困層にも落ちてくるというトリクルダウンなるものを言い訳に大企業にもっと利潤を増やさせた。

そのために原発の再稼働や、原発の輸出、武器の輸出といったことまで日本は手を染めることになってしまったのです。

福島でまだ収束もできない原発事故(現在進行形の被害)を抱えながら、日本国内では原発の再稼働を推進し、海外に向けては原発を売り込むことをし、武器まで海外に輸出しているのです。

そして、財界の要請もあって法人税を下げ、その補填として消費税の引き上げをする。

トリクルダウンどころか、低所得者層から徴収した消費税で大企業の法人税の引き下げの補填をするという、いわば「逆トリクルダウン」までしたのです。

安倍首相の経済政策といったら、そんなものです。

むしろ安倍首相は財界を富ませて、その先に憲法改正をする、それくらいが頭にあるだけではないですか。

 

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