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2017年1月23日 (月)

元ブラック企業部長が実現した残業ゼロ施策

<化粧品会社>元ブラック企業部長が実現した残業ゼロ施策

毎日新聞 1/23(月) 9:00配信    

 ◇定時帰りでも10年連続右肩上がりのランクアップ

 女性新入社員が過労自殺した広告最大手・電通の問題を契機に、改めて「長時間労働」に注目が集まっているが、業績を維持するため、「長時間労働」の慣行を変えられない企業は多い。では稼ぎながら労働時間を減らすにはどうすればいいのか。午後5時にほぼ全社員が退社しながら、設立から10年連続増収を達成している化粧品販売・開発会社のランクアップ(東京都中央区)の「攻めの残業ゼロ施策」の経営から探ってみた。【永井大介】

 ◇午後5時退社OK

 ランクアップは従業員数45人のほとんどが女性だ。しかも岩崎裕美子社長(48)も含めて半数は子育て中で、就業時間は午前8時半から午後5時半だが「午後5時退社OK」を社内のルールにしている。オリジナルブランド「マナラ」を展開し、2016年9月期の売上高は約90億円を誇る。

 同社では午後5時には社員が帰り支度を開始する。保育園への子供の出迎えや趣味の習い事、社外の人脈拡大などアフターファイブの過ごし方は自由だ。05年の会社設立時から、残業を減らすことを目指し、就業時間は午前9時~午後6時に設定。残業しても午後8時には全員が退社していた。

 残業を減らすことを目標にしただけでは、どこの会社もやっていることかもしれない。だが、同社はそれよりも一歩進んだ「定時帰り」を実践している。きっかけになったのが11年3月の東日本大震災だった。震災直後、節電のためのサマータイム制として就業時間を30分前倒しした際に、「帰り道が心配だから、仕事が終わったら午後5時に帰ってもいい」という暫定ルールを作った。

 「社員が少しでも早く帰るために集中して仕事をすれば業績も伸びるのではないか」。岩崎社長の狙いは的中した。3カ月後に社員から5時帰りの継続を求める声があがり、「業績が下がれば、いつでも廃止する」との約束のもと、ルールは今も継続している。

 ◇出産で「お払い箱」にならない会社に

 現在は「定時帰り」の定着している同社だが、設立当初は定時の6時から1時間程度の残業を前提にしていた。そこから残業撲滅に踏み切った背景には、岩崎社長の出産があった。

 出産からわずか3カ月で職場復帰を果たしたものの、当時、システムトラブルを抱えた社内は創業以来初めての深夜残業に追われていた。岩崎社長は子供を保育園に迎えに行くために午後7時には退社しなければならず、「自分の会社なのに頑張っている社員を残して帰るのはつらく、『お先に失礼します』がすごく言いづらかった」

 一方で母親としても子供と真正面から向き合えないことに悩みを抱えていた。「子供に口癖のように『早く早く』とせかしていた」と語る岩崎社長は、仕事へのストレスと夜泣きによる睡眠不足がたたり、大きなめまいを感じるほど体調も悪化した。「残業を減らすだけでは不十分なことに自分の出産で気付かされた」(岩崎社長)。

 当時の社内で出産は岩崎社長が初めてだった。「時短勤務ではママ社員は引け目を感じる。将来、社員が出産しても、お払い箱にならない会社にしたい」と、定時帰りの取り組みに挑戦することを決めた。

 ◇残業をなくすため無駄な仕事はしない

 まず始めたのは、仕事量を減らす「業務の棚卸し」だ。「突然『定時に帰りましょう』といっても、業務量が多ければ定時には帰れないから」と岩崎社長。理由もなく続けていた仕事や、自社でやらなくてもいいような仕事を徹底的に見直した。「システム化」「外部委託」「他の社員にお願いする」「やめる」などに振り分けていった。

 同時に委託先と会社の理念や方向性を共有し、トラブルを少なくすることで製品開発や広告宣伝など、自社の専門分野に集中できる環境を整えた。さらに社内の無駄と思う慣例を徹底的にやめた。(1)社内資料は作りこまない(2)会議は30分(3)社内メールで「お疲れ様です」は使わない(4)社内のスケジュールは勝手に入れる(5)担当部署が明確でない仕事は少数精鋭のプロジェクト化で効率化(6)企画段階のヒアリングを徹底することで致命的な問題の事前把握--の六つのルールを徹底した。

 ◇定時退社で新商品も生まれる

 「定時帰り」は社員に「甘い」会社のようにも見えるが、実際はその逆だ。「限られた時間の中で無駄な仕事はできない。今ある仕事が常に必要かを考えながら、アイデアと成果を出してもらう。就業時間中に漫然と会社にいるだけでいいというのではダメなんです」と岩崎社長は指摘する。

 社員が残業をしなくなりプライベートの時間が増えたことが、新商品開発にもつながっている。

 昨年秋に限定発売した「キッズバブルバス」は、ママ社員が生み出した新商品だ。使うと泡風呂になるだけでなく、入浴しただけで体を洗うことにもなる商品だ。保湿効果や無添加へのこだわりなど、子供の安全面に最大の配慮を加えた。

 キッズバブルバスは「子育て中の母親は、子供が早く風呂から出たがったり、子供の世話でゆっくりと風呂に入れなかったりする」と6歳児を子育て中の社員の実体験から生まれた。岩崎社長は「生活の中で子供とじっくりと向き合う時間がなければ生まれなかった商品。プライベートでインプットしたことを仕事でアウトプットするいい循環がうちの会社には生まれている」と定時帰りが持つ効果を説明する。

 ◇能力評価の指針は外部委託で

 一方で、一般的に難しいとされる「能力」に対する評価は、どのように行っているのだろうか。ランクアップではキャリアアップ基準表(能力評価表)を使い、細かく具体的な評価項目を用いることで、自分は達成できているかを行動面から数値的に評価している。

 具体的には、社内の等級を「S1~3、L1、M1~2」の6段階に分け、等級ごとに「求められる仕事レベル」を明記した。一番下の段階のS1は「第三者の支援を受けながら業務を遂行する」、次の段階のS2なら「自立的に業務を遂行・改善する」といった具合だ。さらに、それぞれの等級に求められるスキルも、具体的に記入されている。

 例えば広報部のS1は「上司の指導のもと、プレスリリースを書ける」と明記され、S2は「一人でプレスリリースを書ける」といった項目がある。等級ごとのスキルを見れば、社員も会社側がどう成長してもらいたいかがわかり、キャリアビジョンも描きやすくなっている。

 能力評価表には「成果」「能力」「情意」という3大項目を設け、「能力」「情意」の項目には全社共通の目標を記載し、「成果」の項目には部署ごとに異なる目標を設定している。この評価表を基に半期に1回、項目別に「S、A、B」の3段階で判定する。

 評価表をもとに、担当上司と1人30分から1時間程度の面談をして評価結果を伝え、同時に今後のキャリアについてじっくり話し合うことにしている。さらに特徴的なのは人事評価システムの作成のほか、評価点数の計算、面談のシナリオなど運用全てを外部委託していることだ。岩崎社長は「漫然と面談をするよりも、プロのシナリオに従った方が、部下の考えていることなどの取りこぼしが少ない」と利点を強調する。

 ◇前職はブラック企業の部長 だからこそ目指す理想

 岩崎社長自身、ランクアップを起業する前は広告代理店の営業本部長として、終電で帰宅する日々を送っていた。社長以外は女性ばかりの会社でやりがいは感じていたが、部下の退職も相次いだ。「結婚したいし子供もほしい。みんな、この会社ではそんなことは無理だと辞めていった」。3年以上続く社員がおらず、仕事のやり方を効率重視に変えるよう提案したが、認められなかった。

 社員がすべて入れ替わるほどのブラックな環境。気がつけば、自分の肌もボロボロだった。35歳を過ぎて「このままでは結婚も出産もできない人生になる」との焦りも感じた。「会社が変われないならば、自分で理想の会社をつくろう」とランクアップを設立した。

 電通、三菱電機と大手企業を中心に、労働時間に関する問題が次々と浮上する。攻めの定時帰りを実践する岩崎社長は「男性は会社に時間をひたすら奉仕する働き方は可能だが、家事も育児もしなければならない女性はその働き方は無理。就業時間内で最大限の能力を提供する働き方ならば女性も働けるし、本来、『働く』とはそういうことではないでしょうか」と指摘している。

(以上、毎日新聞より転載 了)

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